「このイラストはアノ人のイラストだよね」など、ユニークで個性的なイラストは製作者を名乗らなくても理解されます。
イラストの個性はイラストレーターの生計を支えるものでもあり、わかりやすいアイコンともなります。
今回はイラストの個性について一つの画風に特化するメリットと、色々な画法を極めるメリットについてお話したいと思います。
学生時代の画風の探し方
一つのイラストのスタイルを極めることは商業的にメリットがあります。
しかし教育では、学生に自分の多才さを模索する過程で個性を見失うことがあります。走る前に歩くことを学ばなければいけないのと同じで、イラストを描く前にデッサンを勉強しなければ、人体が骨折したようなイラストを描いてしまう場合があります。
ですが、あまりにも多くの実験をしすぎると、学生が自分の声や自分に最も自然に来るスタイルを見つけるのが難しくなることがあります。ある学生の話をしましょう。
見失ってしまった画風(学生1)
ある男子生徒は学校でイラストレーションを学んでいました。彼は強い個性を持ってイラストの勉強を始めましたが、先生に勧められて別の画風を描き始めました。
「1年目は、先生も自分の個性を分解しようとしているように見えた 」と彼は言います。しかし、先生は一つの画風に固執することを望まなかったので、色々な画風をやっていくうちに自分の道を見失ったそうです。
「2年生の半ばには、自分が何をしているのかわからなくなっていました」
独学だから個性が伸ばせた(学生2)
ロンドンを拠点とするイラストレーターの女性は、大学でイラストレーションを勉強したわけではありません。
彼女はファッションの学位を取得している間に、イラストを描くことが楽しくて仕事に変えられるのではないかと思い、卒業後に独立して作品を制作しました。
幸運なことにそれで仕事の受注につながったといいます。
「もしイラストレーションの学位を取得していたら、今の自分があったかな?誰にも方向性を教えてもらえなかったから、自分でやってみて、自分のスタイルを確立することができたんだ」と彼女は言います。
ひとつの画風を極めるメリット
画風が固定されていれば依頼しやすい
クライアントは、仕事を依頼する前に「このイラストレーターはどんな仕事をするのだろう?」その不安を「このイラストレーターはこんな仕事をしてくれるだろう」と、自信に変えて依頼したいと思っています。
ポートフォリオが混在しているような人は、依頼するのは難しいです。クライアントは何を期待していいのかわからなくなってしまうでしょう。締め切りと予算が厳しく、編集者やアートディレクターはリスクを冒す余裕がないのが普通です。
クライアントの求めるイラストレーターとは
一貫性
とあるクライアントは言います。
「私たちは、スタイル的に非常に迅速に納品できることがわかっている完成品のイラストレーターを選ぶ傾向があります。」
イラストレーションを依頼する際には、一貫性が本当に重要です。同様に、一貫したスタイルを持つことは、イラストレーターがブランドや代理店からの信頼を得るのにも役立ちます。
「自分の仕事が何であるか」について明確なビジョンを持つことは、クライアントが自分をどのように配置するかを分かりやすくします。
クライアントが一貫性を求めるのは、自分のアイデアを素早く実行してくれる人を求めているからということもあります。
アイディアを出してくれる
頭の中にコンセプトを持っている場合、クライアントはそのイメージを再現してくれるイラストレーターを望むのは当然のことです。
しかし、できるイラストレーターならクライアントのイメージを超える、さらに良いものを提案してもいいと思います。
作品を依頼するときや、プロジェクトが長くなる場合は、必ずしも画風が優先されるのではなく、一緒に仕事をしていて面白いと思う人や良いアイデアを持っている人を見つけたいとクライアントは思っているそうです。
信頼
駆け出しのイラストレーターにはなぜ仕事が来ないのでしょう?それは信頼がないからです。
選ばれるイラストレーターの最初の基準は「信頼」がすべてです。
多才なイラストレーターのメリット
あるクライアントは、子供の落書きのようなイラストから、きれいなベクターまで描けるイラストレーター求めていました。
このプロジェクトは、異なるスタイルに取り組む能力を持つイラストレーターに依頼されました。
色々なテイストをもつイラストレーターはこう言います。
通常、私はクライアントのアイデアを反映していると感じたスタイルで絵を描きます。プロジェクトでそのアプローチがどのように見えるかをスケッチします。
自分のアートスタイルをより一貫したものにするように勧めてくれた人はいませんでした。でも、自分で考えたことはあります。自分の作品が簡単に認識できるようになった方が、キャリア的には楽になるような気がします。でも、その考えは長くは続かないですね。何かにインスパイアされたら、その創造性を引き出すスタイルで表現したいと思っています。
また、別のイラストレーターは
私の画風は「こんなの描きたい」「試してみたい」など探求していくうちに、進化し、変化していくので、自分のスタイルにとらわれることはほとんどありません。
とはいえ、イラストレーターがさまざまな媒体、テクニック、美学で遊びたいと思うのは自然なことのように思えます。そして、誰も固定されたキャリアを望んでいません。もしあなたが複数のスタイルを持つイラストレーターであったり、自分の練習を試してみたいと思っているのであれば、あなたができることの一つは、異なるスタイルを別の商品として販売することです。
画風ごとに別々に運営する
あるイラストレーターは2つの画風のために別々の名前とウェブサイトを持っています。
ひとつは、コミックスタイルのペンとインクの作品。そしてもうひとつは、大胆な、ベクターベースのスタイルです。
それぞれの画風を別サイトで運営することにより、イメージがブランディング化しやすいメリットがあります。
異なる画風が高い水準でこなせることを証明できれば仕事の新しい窓口になります。
これからイラストレーターになる人へ
もしあなたが最近卒業したばかりで、まだ自分の個性を見つけられていないのであれば、慌てないでください。美大を出たら、すぐに仕事を得なければならないというプレッシャーがありますが、多くの人にとって仕事を受注することは非常に難しいことです。
時間はかかるもの
学生のうちに個性を見つけれた人はほんの一握りだと思います。ほとんどの人は「それっぽい」ものを見に付けて美大を卒業していきます。
イラストレーターとして成長することは、とても長い時間がかかります。才能のあるイラストレーターでも、個性を見つけて確立するまでに数年を費やする人もいるといいます。
自分のポートフォリオがまだ完成されていなくても落胆してはいけませんし、形にするのに数年かかることはごく普通のことです。
デザイナーやイラストレーターは楽しい仕事
デザインもイラストも仕事ですから大変なことや辛いことがたくさんあります。
ですが、ここまで読んでくださった方はきっと共感してくれる思いますが、私たちは結局作ることが好きなんですよね。
好きなことや得意分野を仕事にすることで、やりがいや面白い発見をしているはずです。イラストレーターとして仕事をしていて一番楽しいのは、新しいことを発見し発展させていくことです。
それをスキルアップとも言いますし、楽しみながら成長できることは素晴らしいことだと思います。成長の過程には多きな苦労や痛みがありますが、今より少しだけでも成長し突き進むことで、また新しいスキルと自分に出会えてまた強くなれる気がします。
まだ受注が上手くいかない人は我慢も必要です。需要も頭に入れながら個性を見つけていきましょう。
まとめ
結局イラストの個性は一つに特化したほうがいいのか、多いほうがいいのかは一概には言えないということです。
でも一つだけ言えることは、とりあえず、一つの画風を高い水準で極めることから始めましょう。
ひとつ強い柱をもつことによって仕事も早く安定していくと思います。
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