デザイナーはどんな仕事を担っているか一般の人はどのくらい知っているのでしょうか?ほとんどの人はグラフィックデザインについて、なんとなく知ったつもりでいるでしょう。
しかし、「デザイナーが実際に何をしているか」についての限られた考えによって、グラフィックデザイナーの仕事を非常に狭い範囲に限定してしまうのです。ビジネス用のロゴを作るのか?はたまた、Photoshopで画像を編集するのか?デジタル広告のグラフィックデザインをするのか?
たしかにこれらの業務をしはしますが、これらはデザイナーの仕事のほんの一部に過ぎません。
身近なものの一つ一つがデザイナーによるもの
お店のウィンドウの上にぶら下がっている看板。そして、飲んでいる持ち帰り用のカップを抱きしめているコーヒースリーブ。通りの向こうのポスター。それら毎日接しているものは、すべてグラフィックデザイナーによって作られたものです。
生活の中にあるデザイン全ては、アイデアやコンセプトを伝えるものであり、それがグラフィックデザインの目的です。グラフィックデザイナーの仕事は、創造性と戦略を融合させ、周りの世界と効果的にコミュニケーションをとることです(だからこそ、優れたコミュニケーションスキルは、デザイナーのレパートリーの中でオリジナリティと同じくらい重要なのです)。
デザインセンスは一朝一夕ではない
ほとんどのデザイナーはきれいな絵を描くことができます。しかしデザインスキルを磨くためには、クライアントのニーズに耳を傾け、機能性と美学のバランスを見極めるためのコンセプトを研究し、発展させる方法を知らなければいけません。
結局デザインは経験を積まなければ、話にならない業種です。色々な表現のし方を覚えることによってプロジェクトや製品のアピールのし方を学びます。
個人的な見解ですがデザイナーは長く仕事をするなら正解の職種だと思います。なぜなら、デザインに流行り廃れはあっても技術はずっと長く通用するからです。もしデザイナーになるなら何から理解すべきか、お話しましょう。
基本に戻ろう
種類を問わず、すべてのグラフィックデザインは5つの重要な要素に基づいています。
- 安定性と構造のためのバランス
- 組織と方向性を生み出す優先順位
- よりシャープでクリアな結果を出すためのプロジェクト設計
- 統一と強化のための繰り返し
- コントラストでインパクトを与え、重要な部分を強調する
グラフィックデザインは「WOW」の要素が全てですが、スタイルと目的が結びつかなければ、良いデザインとは言えません。
グラフィックデザインの世界を解明しよう
デザインとは、物理的なものからデジタルなものまで、あるあらゆるものを指します。グラフィックデザインは、素晴らしいウェブサイトや目立つ名刺だけではありません。サイトデザインも、名刺デザインも、より大きなカテゴリーの小さな要素に過ぎません。完全にグラフィックデザインの世界を理解するためには、11の部分に分解する必要があります。
01. ブランディング/ビジュアルアイデンティティ
個人から中小企業、大企業まで、誰もが語るべき独自のストーリーを持っています。アピールすべきこれらのストーリーが出来上がったら、それを声にしてみましょう。
そこでグラフィックデザイナーの出番です。デザイナーはクライアントと協力して、形、色、イメージを物語の中に取り入れ、物語に命を吹き込むために、ブランド(ブランド・アイデンティティ)の視覚的表現を作成します。丁寧なイメージを作り、ブランドの印象をユーザーの心に残すことを目指しています。
ブランディングと、ビジュアルアイデンティティの分野を専門とするデザイナーは、ロゴ、名刺、カラーパレット、タイポグラフィーなど、さまざまなアセットを作成します。
ブランディングチームは、視覚的なコミュニケーションを用いて、無形の資質をユーザーに伝えることを使命としています。グラフィックデザイナーは、すべての分野でブランドの一貫性(ビジュアルや個性)を維持しながら、異なるメディアに通用するデザインを作成しなければいけません。
ブランディングをやり遂げるには、グラフィックデザインのすべてのタイプの知識を知る必要があります。ブランディングのプロジェクトを経験したデザイナーは、多くの場合、後々マーケティングや広告に移行していくと一般的に言われています。
02. 広告&マーケティングデザイン
買い物に行っても、どこに行っても常にマーケティングキャンペーンの広告を目にします。テレビで見たり、オンラインビデオを見たり、新聞を手に取ったり、Facebookをスクロールしている時に目にします。
人々は「ショップ」または「今すぐ購入」ボタンを押すことで無意識に、その広告やUIデザインが良いか悪いか判別しています。ユーザーを行動させるデザインが優秀なマーケティングキャンペーンの尺度です。
デジタル、印刷、またはその両方を合わせたキャンペーンのいずれであっても、マーケティングデザイナーは、これらのプロジェクト縦立役者です。
多くの人は、広告制作にどれだけの時間が費やされているのかを理解していません。マーケティングデザイナーは、ターゲット層に響くコンセプトを戦略的に創り出すことが仕事です。デザイナーはフリーランスとして働くこともあれば、クリエイティブディレクター、アートディレクター、コピーライターなどの社内チームの一員として働くこともあります。マーケティングの要求がより微妙になるにつれ、社内チームに投資する企業も増えてきています。
03. デジタルデザイン
デジタルデザインとは、具体的には、画面上で見るために作成・制作されるものを指します。デジタルデザインとは、UI(ウェブサイト、ゲーム、アプリに見られるユーザーが快適にサービスを利用するための)デザインから3Dモデリングまで、多くの異なるタイプのデザインをまとめた総称です。
デジタルデザイナーは、デジタル体験の視覚的な要素の担当です。ボタンのサイズ、色、配置などはすべてデザイナーの仕事です。デジタルデザイナーは多くの場合、プログラムを動作させたり、コードを書くプログラマーと協力して仕事をします。
ご存知のように、世の中はデジタル化が進んでおり、消費者の画面への依存度が高まる中で、今後も拡大していく分野です。
04. プロダクトデザイン
プロダクトデザイナーは、製品のデザインプロセス全体を統括します。プロダクトデザイナーには6つのタイプがあります。
- アプリがユーザーのニーズとどのように相互作用するかを理解しているインタラクションまたはUXデザイナー
- 画像やUIを作成するグラフィックデザイナーやビジュアルデザイナー
- ユーザーの心を理解するユーザー研究者
- 製品をテストし、その情報やデータを最終製品に伝えるデータアナリスト
- アイデアを可能な限り安く、早く実装・テストできるプロトタイピング担当者
- あらゆるデザイン決定の背景にある戦略を分析するビジネスストラテジスト
これらはすべて個々の役割ですが、優れたプロダクトデザイナーはそれぞれの道筋を理解しています。
05. 編集/出版
グラフィックデザインの中でも一般的なのが、書籍や雑誌などの出版物を扱うエディトリアルデザインです。出版物のデザイナーは、著者のビジョンやメッセージを伝えるために、レイアウトや表紙、社説のグラフィックを作成します。
オンライン出版の台頭により、エディトリアルデザイナーは紙媒体に限らず、オンライン新聞、雑誌、電子書籍などの出版物にも仕事が増えつつあります。オンライン新聞、雑誌、電子書籍などでは、レイアウト、表紙、社説、グラフィックなどがデザイナーの仕事です。
出版デザイナーには、フリーランス、社内クリエイター、またはクリエイティブ・エージェンシーなど形態は様々です。どこで雇われていても、編集者や出版社と協力して、美しく効果的な最終結果を導き出すことが使命です。
06. パッケージデザイン
パッケージデザインは、製品設計の最も目に見えるものと、目に見えないものの両方を指します。パッケージデザインは、市場で製品の売上の可能性に大きな影響を与えます。
パッケージデザインを変更することは、リブランディングの重要な要素であり、デザインの実力を試す分かりやすい指針になります。パッケージングデザインだけで、競合他社よりも先に企業を推進する可能性を秘めていることもあれば、出遅れれば二番煎じとなりありふれたユーザーの目に留まらないデザインになることもあります。
07. レタリング/書体のデザイン
書体を通して素晴らしい芸術作品にするために、書体デザイナーは多くの文具などのツールに幅広い知識を持っています。
書体のデザインには、レタリングの科学であるタイポグラフィの知識が必要です。メッセージやコンセプトに合った正しい書体のを選べば、瞬時にその意図が伝えられるでしょう。しかし、適切な書体を選べなかったら、違和感を感じて気が散ってしまい、まったく読めないこともしばしばあります。
08. 環境に配慮したデザイン
環境デザインは、異なるタイプのグラフィックデザインに多く触れる分野です。環境に配慮したデザインの最終目的は、ユーザーに素晴らしい体験を与えることに焦点を当てています。
記憶に残る良い経験は、その時間が、面白く、快適で、有益なものです。環境デザイナーは、グラフィック、ランドスケープ、インテリア、その他の建築要素に至るまで、すべてを包含しているため、建築の経験やバックグラウンドを持っていることが多いと言われています。
09. セットの美術さん/小道具・大道具
セットのデザイナーは芸能や映像業界の大事な要です。これらのデザイナーは、セットの雰囲気を作るために必要なグラフィックデザインのすべての要素を担当しています。良い小道具のデザインは目立たなければなりませんが、映像に馴染み、美しさを演出するパーツの一つでなければいけません。
デザイナーがこれらの道具を作るのは、シーンに溶け込まさなければいけないので、かなりの努力が必要です。
しかし、そこがポイントなのです。小道具が一つでも不正確であったり、ずれていたりすると、見る人はそれに気付き、監督が没入しようとしている環境から完全に切り離されてしまうのです。
昔ながらの床屋の窓の文字も小道具のデザインの一部だし、シーンの背景にある魔法の薬の瓶のラベルもそうです。これらの道具はすべて誰かがデザインしたものです。セットプロップデザイナーは、登場人物が住む世界をリアルに見せるために必要なものを作る目に見えない手です。
大統領の印章のような実物をデザインし直したり、エルフ語で書かれた新聞のような新しいものを作ったりします。
10. 人間中心のデザイン
人間中心のデザインは、デザイン思考とも呼ばれ、正確にはデザインの一種ではありません。むしろ、それはすべてのタイプのグラフィックデザインに影響を与える哲学です。デザイン思考は、デザインプロセスの中心に人を置きます。
デザイン思考は、プロジェクトの問題を適切に識別し、人間のユーザーのニーズや要望に焦点を当てた解決策を作ろうとします。デザイン思考は、他のタイプのグラフィック・デザインとは区別しなければいけません。
デザイン思考は、ある問題を抱えた人の視点と、その問題を効果的に解決するための優れたデザインについて強く考える、いわば「概念」みたいなものです。
デザインを始める前に、ユーザーを理解する必要があります。コミュニティに没頭し、そのコミュニティの人々と対面で会話をし、デザイナーは常に周囲のあらゆるものを観察しています。人間中心のデザイナーは、この情報をデザインに役立てるだけでなく、その過程で人々を巻き込んでいくのです。
広告代理店やインハウスマーケティングデザインとして働く
ここまでグラフィックデザインについてお話しましたが、ここからはデザインの形態について少しだけお話したいと思います。
グラフィックデザイナーとしての初めのキャリアを積む際には、広告やデザイン代理店に入って他社の仕事をこなすか、社内の広告チームの一員になるかを決めることが一つの決断になります。
デザイン代理店に就職するか、社内のデザイナーになるかは、それぞれ独自の強みと弱みを持つ大きな違いがあります。
会社のデザイナー
社内のデザインチームで働いている場合は、会社の内情を知っているということです。あなたは企業の一部であり、会社全体の物語の方向性に集中することができます。そしてその会社がやっている分野の、多くの製品に携わることで、非常に専門性が高くなります。また、予算の問題にも考えすぎなくていいかもしれません。
デザイン代理店
一方、代理店では、より幅広い商品を扱う様々な企業と仕事をすることになります。幅広い業界で均等にスキルを発揮していく必要があります。
多くの場合、あなたは企業が必要としている「新鮮な目」です。社内チームの一員として働くよりも、より幅広い商品や問題を目の当たりにすることになります。デザイン代理店のデメリットは専門性が弱いことです。他の代理店がより詳しい場合は、さらなる勉強が必要です。デザイン代理店のメリットはいろんな業種のことを経験させてもらえることです。
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