並鷹羽模様のデザインと歴史を解説
1.並鷹羽文様の読み方
1-1.「並鷹羽」は「ならびたかのは」と読む
並鷹羽は一般に「ならびたかのは」と読み、2枚の鷹の羽根を立てて並べた家紋です。
- 読み方:ならびたかのは
- 表記:並鷹羽、並び鷹の羽、並び鷹羽
- 別名:揃い鷹の羽
- 分類:家紋、動物紋
- 印象:端正、力強い、凛々しい
文化財の名称では、「並鷹羽紋」を「ならびたかはもん」と読む例もあります。和柄として紹介されることもありますが、本来は家や一族を示す紋章です。
1-2.並鷹羽とほかの鷹の羽紋の呼び分け
鷹の羽紋は、羽根の枚数や配置によって名称が変わります。
- 並鷹羽:2枚の羽根を立てて並べる
- 違い鷹の羽:2枚の羽根を斜めに交差させる
- 丸に並び鷹の羽:並鷹羽を円で囲む
- 三つ並び鷹の羽:3枚の羽根を並べる
- 一つ鷹の羽:1枚の羽根だけを描く
並鷹羽は羽根が交差していない点で、違い鷹の羽と見分けられます。矢羽根をV字形に繰り返す矢絣とも異なり、基本的には独立した家紋として配置されます。
2.並鷹羽文様の由来
2-1.鷹の羽根を図案化した家紋
並鷹羽のモチーフは、鷹の羽根です。
鷹は獲物を捕らえる勇猛な鳥として知られ、鷹狩りを通じて武家とも深く結び付いてきました。また、鷹の羽根は和弓の矢羽根にも用いられたため、武具を支える重要な素材でもありました。
こうした背景から、鷹の羽紋には武勇や尚武のイメージが重ねられています。鷹の姿全体ではなく、羽根だけを簡潔に表すことで、旗や衣服、道具に付けやすい家紋となりました。
2-2.菊池氏に伝わる起源
並鷹羽は、肥後国を本拠とした菊池氏の家紋としてよく知られています。
菊池氏はもともと日足紋を用いていましたが、当主の代に並鷹羽へ改めたと伝えられています。その理由については、次のような伝承があります。
- 出陣の際、霊鷹が2枚の羽根を兜へ落とした
- 阿蘇に参籠した際、鷹の羽根が土器の上へ落ちた
- 羽根の出現を吉兆と受け取り、家紋に定めた
家紋を改めた当主については複数の説があるため、伝承を確定した史実として扱うことはできません。ただし、菊池氏と並鷹羽の結び付きは、中世の史料から確認できます。
3.並鷹羽文様の歴史
3-1.鎌倉時代の『蒙古襲来絵詞』
並鷹羽を確認できる早い視覚資料が、鎌倉時代の『蒙古襲来絵詞』です。
この絵巻は、1274年の文永の役と1281年の弘安の役に出陣した肥後国の御家人・竹崎季長を中心に描いたものです。菊池武房の旗印には、2枚の鷹の羽根を並べた紋が表されています。
『蒙古襲来絵詞』は13世紀末に成立したとみられており、並鷹羽が中世武家の識別標識として使われていたことを示す重要な資料です。
3-2.中世末期から現代
並鷹羽は、その後も菊池氏を象徴する家紋として受け継がれました。
1603年に描かれたと伝わる菊池能運像にも、揃い鷹の羽の家紋が確認できます。また、天草市に伝わる鷹羽紋螺鈿鞍では、鞍の前輪に並鷹羽紋が螺鈿で表されています。
近世には、並鷹羽だけでなく、違い鷹の羽や丸付きの意匠など、鷹の羽紋全体が多くの武家に用いられました。現在も、紋付きの衣服や墓石、工芸品などに残るほか、歴史を感じさせる和柄として活用されています。
4.並鷹羽文様の縁起
4-1.武勇や強さを連想させる文様
並鷹羽は、武勇や力強さを連想させる家紋です。
- 獲物を捕らえる鷹:勇気、強さ、決断力
- 矢羽根に使われる羽:尚武、武運、鍛錬
- まっすぐ立つ2枚の羽根:端正さ、堂々とした姿
これらは、鷹の性質や武家文化との関係から生まれた意味です。並鷹羽には、困難へ勇敢に立ち向かう姿を重ねられます。
4-2.吉兆を表す意味
並鷹羽には、よい兆しを表す意味も重ねられます。
菊池氏の伝承では、霊鷹が落とした2枚の羽根を吉兆と受け取り、家紋に定めたとされています。そのため、並鷹羽は幸運や武運を願う意匠として捉えられます。
現在では「飛躍」や「挑戦」といった意味を添えることもできます。ただし、これは羽根や鷹の姿から導かれた現代的な解釈であり、並鷹羽に共通する固定された意味ではありません。
5.並鷹羽文様の特徴
5-1.2枚の羽根を並べた左右対称の構成
並鷹羽の特徴は、細長い2枚の羽根をほぼ平行に立てた構成です。
羽根の先端を上へ、羽軸を下へ向け、左右へ整然と配置します。交差する線がないため、違い鷹の羽よりもすっきりとして見えます。
羽軸や羽枝は太い線で単純化され、遠くからでも形を識別しやすいデザインです。左右の均衡が取れた姿から、端正で格調のある印象を与えます。
5-2.囲みや描き方による違い
並鷹羽には、基本形をもとにした複数の意匠があります。
- 外側を円で囲む
- 雪輪や角形の輪に収める
- 羽根を3枚に増やす
- 線だけで表す陰紋にする
- 羽根の筋や太さを変える
家紋として見分ける際は、羽根の枚数と配置、外側の囲みを確認します。色は家紋を識別する中心的な要素ではなく、黒地に白、白地に黒など、使用する品に合わせて反転させることがあります。
6.並鷹羽文様の用途
6-1.旗や衣服、武具
並鷹羽は、家や一族を示す印として使われてきました。
- 旗や幟
- 紋付きの着物や羽織
- 馬具や武具
- 調度品や箱
- 提灯や幕
- 墓石や仏具
歴史資料では旗印や鞍への使用が確認されています。礼装へ家紋を入れる場合は、並鷹羽が実際にその家へ伝わる紋であるかを確認することが大切です。
6-2.工芸品や現代の和柄
並鷹羽は形が明快なため、現在では装飾的な和柄としても使われています。
- 手ぬぐいや風呂敷
- 巾着や財布
- 印章や文房具
- 器や漆器
- 金工品や螺鈿細工
- 暖簾や室内装飾
草花を表す文様ではないため、装飾として使う季節は限定されません。大きく配置すると力強く、小さく繰り返すと端正で落ち着いたデザインになります。
7.並鷹羽文様の贈り物
7-1.挑戦や節目を祝う贈り物
並鷹羽の品は、新たな挑戦や人生の節目を祝う贈り物に取り入れられます。
- 成人や卒業のお祝い
- 入学や就職のお祝い
- 昇進や開業のお祝い
- 武道の昇段祝い
- 歴史や家紋が好きな人への贈り物
「勇気を持って進めるように」「大きく飛躍できるように」といった言葉を添えると、鷹の力強い印象を生かせます。ただし、並鷹羽に特有の伝統的な贈答習慣があるわけではありません。
7-2.家紋を確認して選ぶ
並鷹羽の贈り物は、家紋として贈るのか、和柄として贈るのかを区別して選びます。
正式な紋入りの品を贈る場合は、相手や家族へ家紋を確認する必要があります。同じ名字でも、家系や地域によって伝わる家紋は異なるため、名字だけでは判断できません。
気軽な贈り物なら、手ぬぐいや文具など、装飾として楽しめる品が選びやすいでしょう。家紋との関係が確認できない場合は、「伝統的な和柄として選んだ」と伝えると誤解を避けられます。

